平成29年4月17日　　野球の神様

去る2月中旬、息子が2年間所属した少年野球チームの卒団式がありました。選手としてグラウンドで練習をするのは前日夕方まで。当日は卒団するメンバー11名とその保護者の為に、5年生以下のお父さんお母さんが1日イベントのセッティングをして下さいました。

朝一番からメンバー保護者も含めた紅白戦、監督コーチ対卒団生との記念試合と楽しい企画が続きます。そして昼の部グラウンドでの最後が”親子対決”。これが何かと言うと、卒団生がピッチャーとしてボールを投げて、それを親兄弟がバッターとして一球打つという企画です。



ミミ坊には事前に、「真剣勝負やからな」と宣言していました。2年間は保護者として子供の裏方です。そのホームグラウンドで最初で最後の晴れ（？）舞台。「はい打って下さい」といったような記念イベントでは面白くない。そこで勝負事が好きな息子を煽る事にしたという訳です。聞いたミミ坊は自信満々です。「パパよりもママに打たれそうや」となめた事まで言う始末。

実は嫁さん、今の姿からは想像もできないのですが小学生の頃はソフトボールプレーヤーだったのです。キャッチャーで右投げ左打ちは野球をやっていた義兄の影響とか。力は無いがミート力はこれまでのイベント親睦試合で時々発揮させていました。それに対して私も一応、神戸の少年野球チームに所属はしていました。しかしながらそれから30年経ったオッサンは球拾いのボールは取れない、キャッチボールをまともにできない、イベント親睦試合では打てない・・・とまあ確かに、ミミ坊になめられても仕方が無い(苦笑)。そんな訳で実のところ、挑戦状は叩きつけたものの勝算は全くありませんでした。

最初の娘の打席は後ろでフォローし、バットを当てて無事終了。私の番になった時ミミ坊は「ヨシッ！」と一言ニヤッと笑顔。この時点で私が打つ事は全く想定していない様子。私は少し憧れていたチームヘルメットを初めて被らせて貰い、5年生の誕生日、ミミ坊に買ってやった真っ赤なビヨンドバットをわざわざ取りに行って打席に立ちました。さあ、勝負！



この時、普段だったらギャラリーが沢山いる中で「打てるかな」という気持ちが先行するところ、不思議と周りが全く気にならず勝負に集中している冷静な自分がいました。１球目外角低めが外れ、2球目内角も外れた次の3球目。多分ミミ坊ならばそろそろストライクが来るだろうと予測して待ったその通り、甘い球が来ました。普段シャトルで息子に口酸っぱく言っていた「脇を締める」事だけは忘れず、でも無意識に振り抜いたバットに乗った打球は、何と！！

左中間に飛んでワンバウンドでネットまで到達。その振り切った感触の気持ち良かった事。イベントだと言うのに二塁まで欲張って、返球に慌てて一塁に戻る始末。ベンチに戻った時の驚いた皆さんの顔、子供達がハイタッチで出迎えてくれました。

息子の球を打って喜ぶなんて大人げ無いと言う無かれ(笑）。私のつたない野球経験の中で、間違いなく生涯最高の打球。30年前不器用でヘタクソな野球少年が憧れてた夢が、2年間頑張った息子の卒団式という日にまさか叶うとは。



努力は必ず報われる訳では無いけれど、努力しない人に結果はついてこない。ミミ坊とチームが秋から卒団までの歩みは、野球の神様がニッコリ笑ってくれたようです。そして野球の神様は最後に応援を頑張った自分にまで御褒美を下さった。普段信心を意識する事がほとんど無い私ですが、そんな事を感じずにはいられない卒団式の出来事でした。

そして今日、ミミ坊と仲間達は中学校の野球部に入部届を出してきたそうです。別に甲子園を湧かせてプロ野球選手にならなくても良い。苦しんだり喜んだりしながら、好きな仲間と好きな野球を存分に楽しむ事が、これからの人生をきっと豊かにしてくれるはず。私はミミ坊が野球をしている姿を、まだもう少し観れる事をかなり嬉しく思っています。