平成２３年１０月１４日　　てる吉

写真は９３年・大学３年生の秋、祖母の喜寿の祝いに出席する為愛媛から東京まで走った時の写真。 富士山とZZ-R400、そしててるてる坊主の”てる吉”です。　この”てる吉”　よく　「いいなあ、彼女に作って貰ったんか？」と冷やかされました。確かに観ての通りの手作りで、私が東京までバイクで行く事を知った友人が作ってくれたものです。どんな友人か？は最後にご紹介するとして、一目見てこのてるてる坊主を気に入り”てる吉”と命名、以後ZZ-R400が私の相棒でいる間ずっと写真の位置に吊るして、日本全国走り回りました。バイクに乗っていると今日のように秋晴れで心身ともに最高の時もあれば、雨や寒さでハンドルを握るのさえ辛い時もあります。そんな時、この”てる吉”の笑顔のピースサインを観て自分を奮い立たせたものです。さて・・・・。


バイクは４０km/hでのトコトコ巡航から、それこそ物理的には２００km/hオーバーの超高速巡航まで乗り手のアクセルひとつで自由自在なのが一番の魅力。この当時はとにかく、「見知らぬ所に、より遠くに」 行く為に、ひたすらアクセルを開けてバイクを走らせていました。南は九州鹿児島から、北は北海道宗谷岬まで。海を渡り峠を越えていけば、初めて観る景色が常に待っている。世界を広げる事が、自分の可能性を広げている、そんな気持ちでバイクに乗っていたような気がします。

社会人になり、福岡時代はバイクの生活も縁遠かったのですが、大阪に戻りケロとたった二人のＲＹＵＢＥ大阪（当時はひまわり組大阪支部と呼んでいた）を作ってから再びハンドルを握る事が増えました。当時も私にとっての一番の目的は　「もっと遠くに」　でした（この辺はケロとは少し趣向が違っていましたが）。　もっともこの頃は、”自分の世界を広げる”というよりは　”日常から解き放たれたい”という意味合いが強かったように思います。

そして最近、特にここ数年は自分の中でバイクに求めるものがまた変わってきました。きっかけは２０年近くぶりに復帰した自転車。当初はダイエットと数年前に苦杯を舐めたケロへのリベンジが目的で、それ以上に自転車に期待していた訳ではありません。所詮人力の距離と魅力はしれている、そう高をくくっていました。ところが、実際乗り始めてみると、これがまあ面白い！。片道２０〜３０km（往復４０〜６０km）ならば朝駆け時間（朝９〜１０時帰着）で充分走れる。そして３０km/hで走るからこその地元大阪の再発見がありました。そして翻ってバイクに乗ってみると、同じ事を再認識したのです。

常に高速巡航で走れば、遠くまで行く事はできます。でも、人間の情報処理量には限りがあるので、スピードへの集中が増す分、目にしているはずの途中の景色の印象が薄くなります。　逆にアクセルを緩めて走れば、スピード感と辿り着ける距離は限られますが、景色や雰囲気を楽しみながら走れます。　どちらが良い悪い、という事ではなくて、それぞれに良さがある。最近のＲＹＵＢＥ大阪のツーリングは、企画する側の事情でどちらかと言うと後者を重視したものが多くなりました。

そしてこの事は、バイクに留まらず普段の生き方過ごし方にも同じ事が言えそうです。・・・アクセルを開けてどこまでも遠くまで行くのか。アクセルを緩めて途中の景色も楽しみながらいくのか。もしくはエンジンを切って一休みして、土地の音や匂いを肌で感じてみるのか。私まもなく３９歳の誕生日を迎えます。昔 〜ちょうどZZ-R400と”てる吉”を相棒にして走り回っていた時期〜　は毎年誕生日の度「こんな○○歳になるぞ〜！」と決意表明をしていました。はてさて今の自分はどうなんだろう。近くにいる・ある事のありがたさを実感するこの頃ですから、アクセル全開の生活でない事は確かです。でもバイクでもアクセルを開けない走りばかりしていると廻らないエンジンになってしまいます。遠くまで行く力は奥底に蓄えておきたい。そんな感じでしょか。


冒頭に紹介した”てる吉”ですが・・・、当時廻りから囁かれた「彼女できて作って貰った説」ははずれ。生みの親の正体は愛媛の親友ＴM、残念ながられっきとした男からのプレゼントでした。でも”男が男に惚れる”とは彼への事を言うのでしょう、勿論禁断の話などでは無く、男気の良さに、という意味でですが。長旅に出る私を気遣って”てる吉”を作って出発前夜に持ってきてくれる。彼女が来ているのに押しかけてきた私にカレーを御馳走してくれる（今思うと大迷惑な事をした）。そう言えばいつかの私の誕生日の夜、一人寂しく下宿で過ごしていたら突然、彼女と二人ケーキを持ってお祝いに来てくれた事もありました。彼女であろうが、友人であろうが、大事に思う気持ちをストレートに表現する姿勢が男らしく格好良くて、いつか彼のようになりたいと思ったものです。その後結婚し彼女の実家を継いで松山に戻ったＴM。　どうしているのかな、久しぶりに会いたいものです。