○　平成１９年１２月１４日　　住宅展示場の魑魅魍魎

小さな建築士事務所をパートナーに家造りを進めている私達ですが、最初から建築士に依頼しようと思っていた訳ではありません。家造りに関して知識が全く無いところからスタートしたものですから、大多数の人同様まず家を造ると言えばハウスメーカーだろう、という事で”住宅展示場”なるものに真っ先に足を運びました。結論から先に述べますと、住宅展示場（ハウスメーカー）は、私にとっては華やかだけれど”エグ”い世界でした。


家造りの知識が０からの訪問で、色々勉強になったのは事実です。実際に建てられる家とは異なる豪華なモデルハウスも、実寸法で家をイメージするには便利です。超豪華仕様・オプションで固められたモデルハウスばかりでなく、敢えて標準仕様でモデルハウスを造っている比較的良心的なメーカーもありました。住宅展示場にお世話になった面は確かにあります。反面、住宅展示場というよりもそこを拠点としているハウスメーカーの営業手法には、正直その”エグ”さに驚かされました。


大量のダイレクトメール、突然昼夜を問わず訪問してくる営業マン達にまず驚かされました。セールスマンを家に呼びつける事に慣れている人ならば別でしょうが、私は自分の欲しいものは自分で買いに行くスタイルですから頼んでもいないのに勝手に押しかけてくる営業マンには正直戸惑いました。

「設計相談会」　「住まい相談」等の無料の相談会は形だけで、実際には客の個人情報や計画概要、予算を把握する為のものだった事が何度かありました。形だけの「設計相談会」を受けた後、まだ白紙の状態で契約を勧めたとんでもない会社もあります。

提供される情報は非常に巧妙です。大手一部上場企業ばかりですから、さすがに明らかな「嘘」はつきません。でもあくまでハウスメーカーから提供される情報は当たり前ですが自社にとって都合の良いものがほとんどです。有名な本のコピーを「参考に」と営業マンが渡してくれた内容は、自社にとって都合の悪い部分を意図的に抜いて都合の良い部分だけ抜粋したものだった、という事がありました。「嘘」はないけれど情報の操作は随所であります。

一番驚いた事は、全く訪問した事も無い会社から突然自宅に電話が掛かってきて、他の数社にしか話をしていない私達の計画概要を向こうが知っていた、という事でした。丁度不誠実な会社を１社候補から外した直後の事でした。外した会社が仕組んだかどうかは判りませんが（・・・私はそれしかないと思っています。証拠が無いので断言できませんが・・・）、少なくとも電話を掛けてきた会社は、どこからか私達の個人情報の提供は受けた事は間違いありません。なぜなら私はその会社には訪問した事も営業マンと話をした事もないのですから・・・。住宅展示場入口のアンケートは確かにハウスメーカー全社に行き渡るのですが、その会社が知っていた事はもちろんそんなレベルの話では無く、具体的で詳細なものでした。


華やかな住宅展示場には確かに見るべき所も沢山ありますが、その裏側には得体の知れぬ魑魅魍魎の世界もあるようです。私はそれに嫌気がさして、大手ハウスメーカーを家造りのパートナー候補から外しました。ハウスメーカーには免震構造システム等の先端技術や、会社の資本力（＝安定性）等では素晴らしいものがあります。誠実な担当者に恵まれて、腕の良い設計スタッフや大工も揃い、充分な予算と目指す家造りが一致すれば中小の工務店や建築事務所には真似のできない多彩なメリットを発揮できると思います。でも、私はその条件は満たせませんでした。一生に一度の大事な家を建てるパートナーは、何より信頼できる誠実な相手なのが大前提だという事を教えて貰った、という事で私の住宅展示場巡りは今から思うと価値があったかなあ、と思います。